@ 新型コロナウイルス感染症「COVID-19」の重症者や死者には、なぜか子どもがほとんど含まれていない。これは子どもが感染していないからではない。中国で確認された72,000件以上の症例を分析した結果、全症例に占める10歳未満の子どもの割合は1パーセント未満だった。また、分析時に中国で確認された1,023人の死者のなかに、子どもは1人もいなかった。ところで、2002年から2003年に流行した新型コロナウイルス感染症「SARS」も、子どもより大人への影響が大きかった。感染者の約10%にあたる774人が死亡したが、死者のなかに24歳未満は一人もいなかった。
A SARSの重症例では、まずウイルスが患者の肺で急速に増殖し、発熱とせきの初期症状が出る。すると、免疫系(ウイルスを攻撃する身体の仕組み)が働き出して、患者の約8割は軽症で自然に回復する。しかしそこで治らないと、そのあと病気の第2ステージが始まる。症状は第1ステージよりもはるかに悪化する。第2ステージはウイルスが原因ではなく、患者の免疫系の暴走「サイトカインストーム」が原因だったことが明らかになっている。
B 特に高齢者や病気を抱える一部の患者は、何らかの理由で炎症反応を止めることができず、重症化する。「サイトカイン」(本来はウイルスなどから我々の体を守ってくれる)が肺に大放出され、肺炎・呼吸困難・臓器障害など、SARSの最も重い症状を引き起こす。これらは、今回流行している「COVID-19」と全く同じである。